脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血後の後遺症をお持ちの方へ
脳血管疾患後の後遺症をお持ちの方へ
脳血管疾患とは、脳動脈の異常が原因で起こる病気の総称です。
脳血管疾患には様々な種類がありますが、
その代表的なものが脳卒中です。
脳卒中は、脳血管の狭窄・閉塞が原因で起こる脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの虚血性脳卒中と、
脳血管が破れる脳出血やクモ膜下出血などの出血性脳卒中に分けられます。
これらの疾患は発症すると様々な後遺症が残り、
(約6割の方に何らかの後遺症が残ると言われています)
また、それがきっかけとなって様々な疾患が引き起こされるケースがあります。
そして、それらは全て障害年金の対象となり得ます。
- 片麻痺・半身麻痺
- 脳血管疾患後の後遺症として多くみられるのが片麻痺・半身麻痺です。
麻痺の程度とそれに伴う日常生活動作に対する支障の程度が大きければ、
障害年金を受給出来る可能性があります。具体的には、肢体の機能の障害の認定基準に則って、
関節の可動域、筋力、巧緻性(手先の器用さ)、速さ、耐久性を考慮し、
日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定することになっています。また、障害認定要領によると、日常生活動作と身体機能との関連は、
厳密に区別することはできないが、次のとおりとされています。【手指の機能】
(ア)つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
(イ)握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
(ウ)タオルを絞る(水をきれる程度)
(エ)ひもを結ぶ
【上肢の機能】
(ア)さじで食事をする
(イ)顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ)用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
(エ)用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ)上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ)上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)【下肢の機能】
(ア)片足で立つ
(イ)歩く(屋内)
(ウ)歩く(屋外)
(エ)立ち上がる
(オ)階段を上る
(カ)階段を下りる※なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、
手指の機能は、上肢の一部として取り扱う。
(障害認定基準 第4 肢体の機能の障害 2認定要領より)
※その他、ズボンの脱着、靴下を履く、座る、深くおじぎ(最敬礼)をするの4つ、
平衡機能として1.閉眼での起立・立位保持の状態、2.開眼での直線の10m歩行の状態も、
評価の対象となっています。日常生活の動作の状態は、前記の項目をそれぞれ4段階評価し、
請求者の日常生活における障害の程度を総合判定します。
ちなみに4段階評価は、下記のように行います。〇・・・・一人でうまくできる
〇△・・・一人でできてもやや不自由
△☓・・・一人でできるが非常に不自由
☓・・・・一人で全くできない適切に伝えないと評価されない
前記のように、様々な項目を診断書を作成する医師がそれぞれ4段階評価を行い、
それを元に日本年金機構内で総合判定することになります。
ところが、精神疾患と同様に日常生活での状況をしっかりと伝えないと、
本来よりも軽く評価されることがあります。以前、実際に私が携わったくも膜下出血でのケースで次のようなことがありました。
その方は途中までご自身で進めておられて、既に診断書の取得まで終わっていました。
内容を確認すると、実際の状態よりも軽く評価されているのではないかと疑問を持ちました。その中の一つが「靴下を履く(どのような姿勢でもよい)」という項目だったのですが、
ここが「〇(一人でうまくできる)」になっていました。
ところが、実際の状態を聞いたところ、基本的には自分一人でやっているものの、
健側の手で足にひっかけるようにして履いていて、非常に時間がかかるとのことでした。
また、靴下がズレると自分では戻せず、家族に手伝ってもらわなければならない状態でした。
しかも、調子のいい時でも上記のような状態であり、
調子の悪い時は全く出来ないので、家族に頼っていることも分かりました。そこで、実際の日常生活における動作の状況を書面にして、
出来れば修正して欲しいと頼んだところ、
この項目については「△☓(一人でできるが非常に不自由)」に修正されました。
その他のいくつかの項目についても事実に基づいて修正をお願いし、
結果は、無事に3級での障害厚生年金が認められました。
※因みに、最初の(修正前の)内容では恐らく不該当になったと思われます。このように、単に「できる」「できない」ではなく、
できるが時間が掛かるとか、具体的にこういうやり方でしかできない等を適切に伝えないと、
本来よりも軽く評価されることがあります。
くれぐれもご注意下さい。 - 精神疾患
-
脳卒中後のうつ病は、年齢に関わらず、
発症後の急性期から2年以内に起こることが多いとされています。ところで、障害年金のルールとして、
前の疾病または負傷がなかったならば
後の疾病(通常、負傷は含まれない)が起こらなかったであろうと認められる場合は、
相当因果関係ありとみて前後の傷病は同一傷病として取り扱われます。
また、相当因果関係が認められるケースとしていくつかの例が列挙されているのですが、
そのうちの一つが次のものになります。「事故または脳血管疾患による精神障害がある場合は、相当因果関係ありとして取り扱う。」
つまり、脳梗塞等の脳血管疾患とうつ病などの精神障害は同一傷病とみなされ、
脳血管疾患の初診日が当該請求の初診日となります。※その他、精神疾患での障害年金の注意点については、
『うつ病や統合失調症の方へ』をご参照下さい。 - 高次脳機能障害
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高次脳機能障害とは
高次脳機能とは、言語・思考・記憶・学習など、
運動や感覚を除いた精神・認知機能のことを指します。
交通事故や脳卒中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)により大脳が損傷を受けると、
これらの機能に障害が起こることがあります。
この状態を高次脳機能障害と呼びます。障害認定基準における障害の程度
高次脳機能障害は障害認定基準上、症状性を含む器質性精神障害として取り扱われます。
なお、各等級に相当すると認められる障害の状態は次の通りとされています。
※障害認定基準 第8節/精神の障害 B症状性を含む精神障害より1級
高度の認知障害、高度の人格変化、
その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの
2級
認知障害、人格変化、
その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級
1 認知障害、人格変化は著しくはないが、
その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの
障害手当金
認知障害のため、労働が制限を受けるもの※失語の障害については、『音声又は言語機能の障害』の認定要領により、
別に認定することとされています。詳しくは次の”失語症”をクリックしてみて下さい。就労中の方へ
現在、会社に在籍している場合など、
就労中の方は障害年金は絶対に貰えないと思っている方は少なくないのではないでしょうか。
ですが、就労中であっても、
職場の上司や職業指導員、ジョブコーチの援助や配慮のもとで、
労働に従事しているという方もいるのではないでしょうか。障害認定基準には次のように書かれています。
『労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、
現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、
仕事の種類、内容、就労状況、仕事で受けている援助の内容、
他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。』就労状況等を主治医に詳しく伝えた上で、診断書にも正確に書いて貰うようにしましょう。
また、可能であれば、上司やジョブコーチに、
客観的に見た就労状況等を文書にして頂くようにしましょう。 - 失語症
-
失語症は、大脳の言語野の後天性脳損傷により、
一旦獲得した言語機能に障害が生じた状態を言います。
構音器官(下顎、舌、唇、軟口蓋)に器質的な異常はないものの、
「話す」「聞く」「読む」「理解する」などの機能が損傷されます。障害認定基準における障害の程度
障害認定基準第6節/音声又は言語機能の障害には、
障害の程度として次のように示されています。
2級
音声又は言語機能に著しい障害を有するもの(発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか
又は両方が殆ど出来ないため、日常会話が誰とも成立しないもの)
3級
言語の機能に相当程度の障害を残すもの(話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が、
互いに内容を推論したり、たずねたり、検討を付けることなどで部分的に成り立つもの)
障害手当金
言語の機能に障害を残すもの(話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、
日常会話が、互いに確認することなどで、ある程度成り立つもの)
必要な診断書の種類が異なります
上記のように、脳血管疾患後の後遺症は、様々な部位に様々な障害が残ることがあります。
それに伴って、必要とされる診断書の種類が異なります。
例えば、片麻痺・半身麻痺の場合は肢体の障害用の診断書(様式第120号の3)が必要ですし、
精神疾患や高次脳機能障害の場合は精神の障害用の診断書(様式第120号の4)が必要です。
それぞれの診断書が必要ですので、それに伴って診断書代も発生します。
診断書は保険が効きませんので、病院毎に費用が違っています。
ですが、1枚あたり5,000円~10,000円程度というところが一般的のように感じます。
(私が聞いた中で一番高いものは30,000円というのもありました。)
診断書代もバカになりませんので、特に症状の重い部分に絞った方が得策です。
また、併合して上位等級になる可能性がある場合は、
複数の診断書を出した方がいいでしょう。
※ただし、沢山出せば有利になるものではありません。
日常生活状況を主治医に詳しく伝えましょう
前記の通り、片麻痺・半身麻痺、精神疾患等の場合は、
日常生活における障害の程度や日常生活状況が非常に重要な意味を持っています。
なので、ご自身がその障害によって日常生活でどのような点で困っているかを、
主治医に伝える努力をして下さい。
※主治医とは一緒に住んでいる訳ではありません。
なので、日常生活状況まで(主治医が)把握しているとは思わない方がいいです。
ところで、日常生活の状況を医師に伝えると言っても、
何をどう伝えればいいのか分からないという方もいるのではないでしょうか?
「きちんと伝えきれていなかったので不支給決定となってしまった」
こういったご相談は後を絶ちません。
勿論、ダメだった場合に不服申立て(審査請求や再審査請求)という方法もありますが、
最初に提出した書類(診断書や病歴・就労状況等申立書)の内容次第では、
いくら私たち社労士でもどうすることも出来ません。
幣センターでは、脳血管疾患での申請実績が多数あり経験とノウハウを持っています。
なので、皆様が確実に受給権獲得がなされるようにサポートいたします。
障害年金を請求されるのは恐らく一生に1度のことだと思います。
失敗して後悔する前に、一度ご相談いただきたいと思います。
096-221-1318
※電話はコチラから掛け直しますので、時間を気にせずご相談頂けます。