《第865回》大きなトラブルが増えますよ、コレって① 【障害年金】
こんばんは。
日本年金機構は、日本各地にある年金事務所の約8割が本部の指示に従わず、
障害年金申請書を希望者に渡さなかったとの調査結果を社会保障審議会に示しました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08HEH_Y6A200C1CR8000/
上記新聞の記事によると、昨年4月~6月に、
機構から依頼を受けた社労士が身分を明かさずに訪問する形(覆面調査)の形で実施されたようです。
申請書の交付を含め、障害年金に関する窓口対応150項目のうち、
120項目以上をきちんと出来たのは20%の事務所に留まったとのこと。
また、来年度から専門職員を順次配置すること、
来月からは窓口対応の手引きを導入し、
申請者には書類一式をまとめた「障害年金申請キット」を渡すようにする方針とのことである。
…と、ここまでが新聞の大体の内容です。
確かに、私も「窓口で中々書類をくれなくて往生した」という相談を受けたことがあります。
また、私自身も法的な根拠もなく「これで申請をすべきでない」と言われ、
一悶着あったこともあります。
こういった問題に一石を投じることになる訳ですが、
私は正直、これで問題が解決するとはとても思えません。
なので、手放しに喜ぶ気には全くなれません。
小さなトラブルは減るでしょうが、もっと大きなトラブルは増えるような気がしてならないのです。
確かに意味もなく申請書類を渡さないのは問題があります。
障害年金の請求をするのは本人の権利であり、
これは何人も奪うことは出来ません。
だからと言って、最初に「障害年金申請キット」なる書類一式を渡せば済むことではないと考えます。
きちんと障害年金に対しての確かな知識があり、適切な対応が出来る職員であっても、
最初に書類一式を全て渡さないという人は少なくありません(というか、殆どがそうでしょう)。
※勿論、相手が私たち社労士であれば別ですが。
これには理由があります。
先ず初診日の存在。
申請者は記憶に基づいて相談をします。
初診日から2年やそこらしか経過していないのであれば別ですが、
それこそ何十年も前が初診日というケースは少なくありません。
「最初に病院に行ったのは、確か平成10年5月頃だったと思います。」
こういうあやふやな記憶からスタートする訳ですね。
…で、そこの病院の証明(受診状況等証明書)を受けることから始めることになります。
しかし、そこの病院にカルテが残っているとは限りません。
既に病院が無くなっている(廃院している)こともあり得ます。
その場合は何かしらの物証がないと(基本的には)初診日は認められません。
しかし、その場合でも「受診状況等証明書が添付できない申立書」を付けて、
次に通院した病院で受診状況等証明書を取れば、
取敢えず提出するだけであれば問題はありません。
しかし、実際はきちんと初診日が証明できる物証がないと、
中々認められることは不可能に近いのが現実です。
※昨年の10月から初診日の取扱いが変わりました。
かなり改善したと考えている人も多いと思いますが、
実際には最小限度の改善しかなされていません。
一方、病院に運よくカルテが残っていて、
受診状況等証明書を書いて貰ったとしましょう。
しかしながら、ご本人の記憶と(時期が)かなりズレていることは多々あります。
また、それだけならいいのですが、
これが初診日の証明として使えないケースも多々あります。
「当院受診の1年程前から〇〇の症状にて、近所の内科を受診していた。」
こう書かれていた場合は、そこに書いてある近所の内科が初診日になる可能性があります。
そうなると、またそこの内科で受診状況等証明書を書いて貰わなければなりません。
…もうお分かりですよね?
この段階で最低でも1回はきちんと初診日の証明の内容を確認して貰う必要があるということです。
勿論、私たち社労士にご依頼いただいているケースであれば、
私たちがその都度キチンとチェックをします。
しかし、一般の方がご自分で行おうとするのであれば、
やはり窓口職員に確認をして貰う必要があるのです。
私の話で恐縮ですが、以前、受診状況等証明書や診断書は全て取得し、
後は病歴・就労状況等申立書(以下、申立書)を書くだけ、
という段階の方からご相談をいただいたことがあります。
しかし、書類を確認したところ、
初診日の証明が適切になされていないことが分かりました。
初診の病院が既に廃院していたのです。
その方は窓口で言われた通り「受診状況等証明書が添付できない申立書」を書いた上で、
次に通院した病院で受診状況等証明書を書いて貰っていました。
書類上は一応揃っていますので、後は申立書を書けば、
そのまま受付けられることになったでしょう。
結果は間違いなく「初診日不明の為棄却」になったと思われます。
(その後、初診日の証明が終わるまで、実に半年以上掛かりました。)
しっかりと分かっている人がこまめに確認をしないと、
非常に怖い結果になり兼ねないものなのです。
もっと書きたいことがありますが、
長くなって来ましたので続きは次回。