事例13:変形性股関節症【社会的治癒が認められた例】(50代・女性)
疾患名 | 変形性股関節症 |
年代・性別 | 50代・女性 |
経過・症状 | 昭和56年頃、看護師として勤務中に階段で転倒。職場でレントゲン撮影をしたところ、右股関節を亜脱臼していることが分かった(医師の診察は受けていない)が、その後は徐々に痛みも無くなった。その後結婚し、専業主婦として生活をしていたが、平成2年になると、右股関節の痛み、脱力感、痺れにより歩行が難しくなった。A病院を受診したところ、右変形性股関節症、右臼蓋形成不全と診断され、3ヵ月後に回転骨切り術を施行された。それから3年程はリハビリや経過観察の為の通院を続けたが、その甲斐もあり、痛みや歩き難さは完全に消失し、看護師の仕事にも復帰した。それからは痛み等の症状はなく、看護師として働いていた。また、プライベートではこの間に3人の子供を出産、職場の上司や同僚等と家族旅行に出かけるなど、仕事に家事に育児にと、非常に充実した日々を過ごしていた。そういった日々が約6年間続いた後に右足に痛みが発生。平成11年、再度A病院を受診することになった。その後も右足の痛みは続いていたが、子供を養う為に何とか仕事も続けていた。しかし、痛みは徐々に酷くなり、A病院を再受診してから約10年後には退職を余儀なくされた。それからさらに2年後には人工関節置を挿入することになった。 |
請求の過程 | ご存知の方も多いと思いますが、人工関節を挿入している場合は、障害等級は3級相当と判断されます。ところで、今回の案件は初診日となり得る日が、①昭和56年、転倒後にレントゲン撮影をした日(厚生年金期間中)②平成2年、股関節等の痛みでA病院を受診した日(国民年金期間中)③平成11年、右足の痛みによりA病院を再受診した日(厚生年金期間中)の3つの候補がありました。しかしながら、前記のように①についてはレントゲンは撮ったものの医師の診察は受けておらず(当然カルテは残っていませんでした)、また、A病院にカルテが残っていた為、②の証明は可能でしたが、ここが初診日だと国民年金期間中になりますので、不支給になるのは明らかでした(障害基礎年金には3級はない為)。したがって、③が初診日として認められることが今回の請求の絶対条件であり、その為には“経過・症状”で示した約6年間について、社会的治癒の状態にあったことが認められる必要がありました。請求にあたっては当時勤めていた上司の証言や、当時の写真等を準備しました。非常に難しい請求であり、ご依頼者様にも長期戦になることを覚悟しておいて欲しいとお伝えしていましたが、結局、最終的に年金証書が届くまでに約2年半の月日を費やすことになりました。 |
結果 | 障害年金請求⇒不支給、審査請求⇒棄却、 再審査請求⇒3級での障害厚生年金支給決定 |
寸評 | 社会的治癒は認められるものではなく認めさせるものです。その為には、社会的治癒の状態にあったことを主張する必要がりますし、主張の根拠となる証拠等が必要となります。今回の案件は、その証拠として当時の上司の証言と当時の写真を添付しましたが、内容的に決め手に欠けるところがあり、さらに③の受診から約10年間は働いていた(かなり無理をされていたのですが)事実もありましたので、前記の6年間について社会的治癒の状態にあったことを認めさせるのは非常に難しいものでした。しかし、完璧とは言えないまでにも資料を添付することが出来たことにより、可能な限り最大限の主張を行うことが出来ました。これも証言をされた上司の方、および写真を探して下さったご依頼者様のお蔭です。改めまして御礼申し上げます。 社会的治癒の絡む案件は非常に難易度が高いです。また、今回のように、審査請求や再審査請求まで戦うことも視野に入れておく必要もあります。一般の方がやみくもにやって上手く行く程甘いものではありません。また、社会的治癒の絡む案件は、受けたがらない社労士が多いのもまた事実です。他の事務所に断られた方でもお話を伺いますので、先ずはご相談いただきたいと思います。一緒に可能性を探りましょう! |