事例28:複合性疼痛症候群(40代・女性)
疾患名 | 複合性疼痛症候群 |
年代・性別 | 40代・女性 |
経過・症状 | 大地震に罹災し、ガラスで左アキレス腱付近を切ってしまった。翌日、避難所の医療スタッフから消毒や縫合等の応急措置を受け、その後の抜糸や消毒等の措置もここで受けた。路面状況が回復したことでようやくA病院を受診し、ここでも消毒や痛み止め等の措置を受けた。その後、家から近いB整形外科に転院したが、この頃になると痛みは左下肢全体に広がっていた。セカンドオピニオンとして3つの病院を受診したが、痛みは治まらないどころか、右下肢や臀部、腰部など広範囲に広がって行った。現在もリハビリを続けながら痛み止めの注射を受けているが、それ程の効果はなく、歩行に多大な支障をきたしている。歩行の際は松葉杖を使用しているが、それでも不安定であり、少しの段差でも足を取られて転倒することも度々あり、骨折も経験している。 |
請求の過程 | 今回は疼痛による歩行困難の症例です。障害年金のルール上、「疼痛は原則として認定の対象外」とされていることもあり、慎重に事を進める必要がありました。いつものように日常生活動作の状況について詳しくヒアリングし、これを書面にして診断書作成依頼の際に主治医に情報提供をしました。勿論、病歴・就労状況等申立書も詳細に書いたことは言うまでもありません。一方で、受診状況等証明書(初診日証明のための書面)の作成をお願いしましたが、日付について矛盾した内容(初診日に左足切創で最初に受診した日、発病日に複合性局所疼痛症候群の確定診断日が書かれていた)となっていました。発病日が初診日の後に来ることは絶対にないこと等の障害年金のルールを説明した上で修正を求めましたが、応じて頂けませんでした。そこで、田平からの補填文書により、事の経緯(障害年金のルールを説明した上で修正を求めたが、応じて頂けなかったこと)及び、左足の切創が原因で今回の傷病が引き起こされていることを説明し、請求に臨みました。 |
結果 | 3級での障害厚生年金の支給決定(3年の遡り支給あり) |
寸評 | 請求の過程にもある通り、初診日について矛盾した記述がなされており、このことを医師に説明しても修正には応じていただけませんでした。初診日は障害年金にとって非常に重要であり、また、発病日が初診日よりも後に来ることは絶対にありません(同じ日はあり得ますが)ので、提出の際に窓口でこの点を指摘されたでしょうし、何とか窓口で受け付けてくれたとしても、その後の返戻(書類の不備や内容の疑義等により、書類が戻ってくること)の対象になった可能性があります。時には今回のような補填文書が重要になってくることもあります。 ところで、“請求の過程”にも書いた通り、疼痛は原則として障害年金の対象外です。あくまでも「原則」であり、次の例外規定があります。良ければ覚えておいて下さい。 「疼痛は、原則として認定の対象とならないが、四肢その他の神経の損傷によって生じる灼熱痛、脳神経及び脊髄神経の外傷その他の原因による神経痛、根性疼痛、悪性新生物に随伴する疼痛等の場合は、疼痛発作の頻度、強さ、持続時間、疼痛の原因となる他覚所見等により、次のように取り扱う。 ア 軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは、3級と認定する。 イ 一般的な労働能力は残存しているが、疼痛により時には労働に従事することができなくなり、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものは、障害手当金に該当するものと認定する」 ※国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第9節/神経系統の障害より |