事例18:頚椎・胸椎・腰椎圧迫骨折、腰部脊柱管狭窄症【原因は全て骨粗鬆症】(50代・女性)
疾患名 | 頚椎・胸椎・腰椎圧迫骨折、腰部脊柱管狭窄症 |
年代・性別 | 50代・女性 |
経過・症状 | 平成27年11月、転倒し右肩を骨折。数週間後、治療をしていたA整形外科の勧めで骨密度検査をしたところ、骨粗鬆症との診断がなされた。その時は骨粗鬆症の治療をそれ程勧められなかったこともあり、治療は行わなかった。それから約半年後、首の痛みや手の痺れを感じた。その後、MRI等の検査を経て頚椎椎間板ヘルニアと診断されたが、治療の甲斐もあり、徐々に痛みは治まっていった。 平成29年12月、バスから下車した時に転倒してしまった。その時は捻挫した足の痛みだけだったが、年を明けた頃からは、背中から腰にかけての痛みも感じるようになった。痛みが激しく仕事にも集中できなくなり、B整形外科を受診したところ、脊椎が1本折れていることが分かったが、その後C病院でのMRI検査の結果、脊椎の骨折は2本であることも分かった。入院のためD病院に移ったが、入院中はずっと車いすでの生活であり、入院中にE病院でMRI検査を2回受検したところ、1回目は7本、2回目は9本の骨折が確認され(この間、転倒や衝突など、骨に衝撃が加わるようなことは全く無かった)、医師からは「こんなに症状の酷い患者は初めてだ」と言われた。 現在は退院しているが、常時コルセットと車いすを使用しないと、移動はおろか上半身を支えることもできない状態である。 |
請求の過程 | この方と最初にお会いした時(平成30年夏)、背骨が9本も折れている状態でした。某共済の担当者からは、「骨折の場合は骨折して初めて受診した日が初診日となるので、そうであればまだ1年6ヵ月経過していないので請求は出来ない」との説明がありました。交通事故等の激しい衝撃があった訳ではなく、普通に生活をしていてそうなったとのことであり、原因は間違いなく骨粗鬆症にあると考えました。請求にあたっては、A整形外科での骨密度検査の結果票に加え、私からの意見書(大きな衝撃が加わることなく脊椎が9ヵ所も骨折することは通常考えられないことから、骨粗鬆症が原因であるとの内容)を添付して提出しました。それから暫くして某共済から通知があり、四肢の麻痺が発生した時期の特定が必要であること、さらに、麻痺の発生が平成29年12月であるならばB整形外科が初診となり、まだ1年6ヵ月が経過していないとの内容でした。四肢それぞれの麻痺が発生した時期はバラバラですが、全て平成29年12月から数か月後のことですので、このままでは請求が却下となってしまいます。そこで、主治医に四肢麻痺の発生時期を特定するだけでなく、麻痺の原因が圧迫骨折や頚椎の神経圧迫(共にその原因は骨粗鬆症)であることを明記して頂き(勿論、その前に骨粗鬆症が原因であることを、主治医に再度確認していました)、照会への回答としました。 |
結果 | 1級での障害厚生年金支給決定。 |
寸評 | 今回は、初診日の時期によって障害認定日(初診日から1年6ヵ月経過日)が変わるため、傷病の発生日が共済からの指摘通りの日であれば、もう少し待たないと請求はできなかったことになります。さらに、(共済からの)照会文書にはこちらが予め主張していた骨粗鬆症については、何ら触れてありませんでした。共済の求め通りに四肢の麻痺の時期だけを回答していたのであれば、まだ1年6ヵ月経過していないとの理由で、請求は却下された筈です。今回のように審査中に疑義照会(何かしらの疑義があり問い合わせをすること)の文書が届くことは珍しくありません。勿論、それに真摯に返答しなければならないのは言うまでもないことですが、疑義照会の意味を考え、請求上の不利益のないような回答をすることが非常に重要です(勿論、事実に反する回答は不正行為ですので、絶対にしてはなりません)。こういった特殊なケースについては、無理をせずに最初から専門家に相談された方が賢明です。 |