事例37:うつ病(50代・男性)
疾患名 | うつ病 |
年代・性別 | 50代・男性 |
経過・症状 | 約25年前、義理の父母と同居を始めたが、不仲からストレスを感じており、不眠や不安に悩まされるようになった。A診療所(当時勤めていた会社が設立した医療機関)を受診、うつ病と診断された。同診療所は平日の日中しか診察ができない等の理由で利用し辛く、また、酒を飲めば眠れたこともあり、次第に受診しなくなった。それから約6年間は病院等の受診はしなかった。不眠や不安を覚える時は酒やパチンコで気を紛らわしていた。 約15年前、弟の急死をきっかけに不眠や不安、食欲不振等の症状が強くなり、B診療所を受診。抑うつ神経症と診断された。同診療所は家から遠かったが、薬のみの処方も認めており、非常に利用し易く、それから数年間は特に問題なく過ごしていた。しかし、約10年前に母の病気、父の急死、大地震を相次いで経験。余震で眠れず、不安な毎日を過ごすこととなった。薬が無くなったのでB診療所に行ったところ、院長の急死により廃院したことが分かった。仕方なく、家から近いC病院を受診、うつ病と診断され、抗うつ剤と眠剤を処方された。通院しながら何とか仕事は頑張っていたものの、約3年前にクモ膜下出血で意識を失い、D病院に救急搬送された。手術は成功し無事に退院できたものの、不眠や不安、気分の落込みとった症状は強く、徐々に遅刻や早退、欠勤が増え、とうとう休職をすることになった。その後は休職と復帰を繰返し、結局は退職を余儀なくされてしまった。 現在もC病院に通院しながら療養している。不眠や不安といった症状に苛まれ、何もする気になれない。家事全般を同居の母に頼っており、日常生活もままならない状態である。 |
請求の過程 | この方も熊本県外の方です。当初、この方はB診療所が初診だと思っていました。地元の社労士に依頼して手続きを進めようとしたものの、B診療所を受診したことを証明できず、年金の請求が出来ませんでした。その後、何人かの社労士に相談しましたが、やはりどうにもなりませんでした。幣事務所にご相談を頂いたのはここからです。先ずは現在も通院しているC病院の初診日が5年以上前であることに着目し、C病院の初診日のカルテにB診療所のことが書いていないかを確認しましたが、初診日を示すような記述はありませんでした。そんな折、B診療所に当時勤めていた医師が、とある病院に勤めていることが分かりました。さらにその病院に問い合わせると、同医師はB診療所のカルテを保管していることも分かりました。そこで、受診状況等証明書(初診日証明のための書式。以下、受証)を書いて頂きましたが、そこで初めてA診療所の存在が分かりました(ご本人様もA診療所のことは全く忘れておられました)。残念ながらA診療所には当時のカルテ等は残っていませんでしたが、B診療所の受診内容が書かれた受証及び開示請求したカルテ(平成4年頃…うつ病…会社の診療室へ受診といった記述あり)を添付し、さらに田平からの意見書(カルテは5年以上前に書かれたものであり、さらに平成4年は全て厚生年金期間中であり、どの日においても保険料納付要件も満たしている)も添えて請求に臨みました。 |
結果 | 2級での障害厚生年金支給決定。 |
寸評 | 前記の通り、地元の社労士何人かに相談してもどうにもならなかった困難事例です。非常に難しい案件でしたが、結果を残せてホッとしています。今回上手くいった最大の要因は、ご依頼者様が決して諦めなかったことに他なりません。初診日を探すのは非常に大変ですが、簡単には諦めないで下さいね。また、社労士に相談してもダメな場合でも、他の社労士なら何とかなるケースもあります。諦めずに相談してみましょう。 それと、結局A診療所のカルテは残っていなかったのに、何故認められたのか、と不思議に思われた方もいるかも知れませんね。これは、下記の内容が根拠になっています。良ければ覚えておいて下さい。 「請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に請求者申立ての初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができることとする。」 |