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事例33:統合失調症【社会的治癒が認められた例】(40代・男性)

 疾患名  統合失調症
 年代・性別  40代・男性
 経過・症状  約20年前、友人と遊んでいる時に発作が起き、A病院に救急搬送され、てんかんと診断された。さらに1ヵ月後にも発作で救急搬送されたことで、暫くは通院も服薬もしていた。しかし、その後発作が起きなかったことから、服薬も通院も徐々にしなくなっていった(2回目の発作以降は異常なし)。
 約10年前に妻と離婚。この頃から不眠に悩まされるようになった。その頃、友人と食事をしている時に、急に後ろの席の人が自分を悪く言っているような気分になり、その後に発作を起こしてしまった。これをきっかけにBクリニックを受診、10年以上前にてんかんで治療を受けていた旨を伝えると、てんかん性精神病と診断され、再度A病院での治療を勧められた。しかし、10年以上発作が起きていないことから診断に不信感を覚え、結局1回しか受診しなかった。離婚後は精神的にショックだったが、友人や職場の同僚などの理解ある人間に恵まれ、離婚後1~2ヵ月後には不眠に悩まされることもなくなった。職場では責任ある立場を任され、遣り甲斐を持って働いていた。また、子供達とは毎月会う度に魚や虫採りに行き、夏には泊りがけででかけることもあった。友人とも趣味の車やプロレス観戦などを楽しみ、お付き合いをしている女性もいて、公私ともに充実した生活を送っていた。その後転職し、仕事が忙しくなったが、最初の1年は問題なく過ごしていた。その後、異動してきた所長との折り合いが悪く、陰湿な嫌がらせをされたり、仕事の実績を横取りされることが続いた。この頃から不眠に悩まされるようになり、ストレスから過食になったことからCクリニックを受診、適応障害と診断された。
 現在は統合失調症と診断されている。気分の落ち込みや不眠、不安などに苛まれている一方で、幻覚が見えることもある。日常生活でも支障が多く、家事なども両親に頼っている状態である。
 請求の過程  当初は病院のソーシャルワーカーと一緒に請求を進めようとしたものの、Bクリニックで取得した受診状況等証明書(受証)にA病院のことが書いてあり、年金事務所ではてんかんとてんかん性精神病とは因果関係があるので、A病院が初診である旨の説明を受けていました。しかし、A病院のカルテは既に廃棄されており、受証を取得することはできず、さらに診察券などの物証も残っていませんでした。弊事務所に連絡があったのはここからです。詳細にヒアリングを進めると、Bクリニック受診からCクリニック受診までの間が約6年半空いており、かつ、その殆どが厚生年金期間中にあったことから、この間を社会的治癒として主張し、Cクリニックを最初に受診した日を初診日とすることにしました。請求にあたっては元同僚や学生時代からの友人から、当該6年半の間の証言をしていただき、さらに厚生年金の加入記録も根拠にして、社会的治癒の状態にあったことを主張しました。
 結果  2級での障害厚生年金支給決定。
 寸評  今回も社会的治癒の絡んだ案件です。正直なところ当時の写真等もあれば良かったのですが、当時の写真が残っておらず、複数人の証言だけで社会的治癒を主張しました。普通であれば主張としては少し弱いのですが、この方の場合は、前記の通り社会的治癒を申立てる期間の殆どが厚生年金期間中にあり、かつ、Cクリニックの初診日から1ヵ月後に退職をしていたこともあり、少ない証拠の割には主張はしやすかったように思います。ですが、今回もすんなりとは認められず、途中で返戻(審査の疑義等により書類が戻ってくること)が行われています。
 初診日が古くてカルテが残っていない、その当時は年金保険料を支払っていなかった等の理由で、社会的治癒の可能性を模索される方は少なくないと思います。ですが、社会的治癒は簡単に認められるようなものではありません。私たち専門家でも難しい請求になりますので、一般の方ではまず無理だと思われて間違いないでしょう(一般の方が社会的治癒の絡んだ案件を成功させたという例は、私は1件も聞いたことがありません)。社会的治癒の絡んだ案件については、自分でやろうとせず、私たち専門家に相談されることをお勧めします。

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