事例5:統合失調感情障害(60代・男性)【社会的治癒が認められた例】
疾患名 | 統合失調感情障害 |
年代・性別 | 60代・男性 |
経過・症状 | 20代の頃、稼業の経営悪化、家族の入院などにより、多大なストレスを感じていた。次第に誇大発言や異常行動などの症状が現れ、精神科の病院を受診。精神分裂病(現、統合失調症)と診断され、入退院を繰返した。 最後の退院後は、勤めていた会社に復帰した。その後、他社からの引抜きで転職し、そこで大きな仕事を任されるようになった。プライベートでは結婚、子供の出生など、公私ともに非常に充実した日々が10年以上続いた。この間は、全く精神病の症状を感じなかったが、医師からの指示により、予防のための通院と服薬は続けていた。 その後、親族トラブルや過重労度などにより、次第にストレスが蓄積していった。気分の落込みや思考の停止、不眠、耳鳴り、幻臭などの症状を感じ、仕事も休みがちになり、転職と退職を繰返すことになった。数年前に、最後の職場を退職した後は、殆ど閉居の状態である。不眠、抑うつ気分、思考の停止といった症状は相変わらず酷く、昼夜逆転しがちの生活である。 |
請求の過程 | 20代の頃に最初に受診した当時、国民年金の保険料を全く納めていませんでした。したがって、最後の退院から症状が再燃するまでの間に、社会的治癒が認められなければ、支給決定は絶対になされないものでした。その為、申立書の内容には細心の注意が必要でした。また、診断書には、社会復帰している間の通院および服薬が、治療ではなく予防を目的としていることを記述いただきました。さらに、当時勤めていた職場の同僚の証言を複数取得し、また、社会保険審査会の採決例を添付するなど、請求にはかなり工夫をしました。 請求から約1ヵ月後、受診状況等証明書を添付するようにと返戻がありました。しかし、今回の案件は、初診から現在まで同じ医療機関を受診していましたので、本来であればその必要はありません。その為、社会的治癒をさらに詳しく証明する必要があると判断し、主治医にお願いして、当時処方していた具体的な薬名と処方量を書いていただき、再提出しました。 |
結果 | 2級での障害厚生年金の支給決定。 |
寸評 | 障害年金には、『過去の傷病が治癒(社会的治癒を含む)し、同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し、医師等の診療を受けた日が初診日となる。』というルールが存在します。社会的治癒が認められるのは、症状が安定して特段の療養の必要がなく、長期的に(概ね5年以上)自覚症状や他覚症状に異常が見られず、普通に生活や就労が出来ている場合です。さらに社会保険審査会の採決例では、『持続的服薬があっても、それが予防的服薬の範疇にあると認められれば』、前記の要件を満たす限り社会的治癒は認められるとされています。今回のケースは、通院と服薬が予防の範疇にあり、かつその間が社会的治癒の状態にあったと認められることが最大のポイントでした。 請求にあたっては、当時の証言をしていただいた元同僚の方々のご協力がありました。また、主治医が障害年金と社会的治癒に対して理解を示され、多大なるご協力をいただいたことも、非常に大きな要因です。皆さま、本当にありがとうございました。 しかし、結果に結びついた一番の要因は、ご本人様が決して諦めなかったことに他なりません。これから障害年金の請求をお考えの皆さま。請求の過程では、困難なこともあるかも知れません。しかし、簡単に諦めないで下さいね。 |