事例52:離人・現実感喪失症候群《障害認定日当時:社会不安障害、うつ病》(30代・女性)
疾患名 | 離人・現実感喪失症候群(障害認定日当時:社会不安障害、うつ病) |
年代・性別 | 30代・女性 |
経過・症状 | 中学1年の時にイジメを経験。長年家庭内不和も続いており、学校でも家庭でもストレスを抱えていた。離人感覚が始まったのはこの頃からである。高校でも友人を作るのが苦手であり、さらに大学生になると、人の多い場所にいるだけでも極度に緊張してしまうようになった。気分の落込みや不安感が続くことから、Aクリニックを受診。社交不安障害と診断され、抗不安薬等を処方されたが、あまり効果は無かった。主治医からの勧めによりB病院に転院、カウンセリングも受けたが、やはり効果は無かった。休学を機にAクリニックに戻ったが、暫くは引籠りのような状態だった。大学卒業後はアルバイトも経験したが、対人緊張から体調を崩してしまい、どこも長続きせず。その後、B病院に戻ったが、やはり症状は回復しなかった。友人の勧めでCクリニックに転院。それから約2年後に、離人症治療の有名な先生がいることを知りD病院を受診。ここの先生が最も相性が良く、受診後は精神的にも安定していた。暫くはCクリニックとD病院を並行して受診していたが、先生が病院を退職し、これを機に終診。現在もCクリニックへの通院を続けているが、現実感覚がなく、離人感による苦痛も続いている。また、気分の落込みや不眠、倦怠感等が続いており、家事が出来ないだけでなく、日常生活のあらゆる場面で夫の声掛けや助けが必要な状態である。 |
請求の過程 | 最初にご相談を受けた時点で、既に診断書を取得されていましたが、最終的な部分は専門家に入って欲しいということで受任することになりました。病名が「離人・現実感喪失症候群」となっていましたので、(神経症のカテゴリーに属することから)このままでは障害年金の対象外とされてしまいます(要するに不支給になるということです)。そこで、主治医に精神病の病態を示しているかを確認した上で、精神病の病態を示していることの追記と、その他診断書の内容で現実と則さない(実際よりも軽く書かれている部分)の修正を求めました。その結果、前者のみ追記をして頂くことが出来ました(後者については、先生の評価は変わりませんでした)。また、ヒアリングをする中で、障害認定日(初診日から1年6ヵ月経過日)当時の状態は障害等級に該当する可能性が高いものの、その当時の診断書を取得していなかったことから、改めてその当時の診断書を取得し、障害認定日請求(遡及請求)を行いました。 |
結果 | 2級での障害基礎年金の支給決定(5年の遡り支給あり)。 |
寸評 | 障害年金は殆どの傷病が認定の対象となりますが、いくつか(数は少ないですが)対象とならないものがあります。その一つが「神経症」です。ただし、これには例外があり、障害認定基準には次のように書かれています。
「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とはならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。」 今回の離人・現実感喪失症候群だけでなく、不安障害やパニック障害、強迫性障害、適応障害、解離性障害、身体表現性障害等もこの神経症のカテゴリーに属します。神経症で障害年金の請求をお考えの方や、取得した診断書に神経症の病名が書かれていた方は、主治医に「精神病の病態を示しているか」をご確認の上、主治医がそのような見解を示している場合は、必ず診断書に明記して頂くようにして下さい(そうしないと(大袈裟ではなく)不支給となる可能性が高いですので)。 それと、今回は当初ご自身で障害年金の請求を進められていました。診断書が神経症の病名になっていたのは前記の通りですが、遡及請求が可能であったにも関わらず、(相談を頂いた時点では)障害認定日当時の診断書を取得していませんでした。ご依頼者様はとても頭の良い方でしたので、本人が理解していなかったとは考えにくく、相談窓口でその辺りの説明が疎かになっていた可能性が高いものと考えます。今回以外にも、遡及の可能性があるにも関わらず、事後重症請求(遡りのない請求)の案内しかされていなかった、というご相談は何度もお受けしております。請求者が多額の損失を被ることになりますので、年金相談窓口において、この辺りの説明は徹底して頂きたところです。 |