事例30:線維筋痛症(60代・女性)
疾患名 | 線維筋痛症 |
年代・性別 | 60代・女性 |
経過・症状 | 5年程前から糖尿病の治療でA病院に通院していたが、1年程経過した頃から肩甲骨周辺に痛みを覚えるようになった。膠原病の疑いがあることからB病院を紹介受診したが、膠原病は否定され、線維筋痛症が疑われた。その後、専門医であるCクリニックを紹介受診し、線維筋痛症の確定診断がなされた。サインバルタ等の薬を処方されたものの効果はなく、逆にめまいや頭痛、吐き気等の副作用に苦しめられることになった。さらにCクリニックからは「(痛み等の症状が)酷すぎるので、これ以上の治療は出来ない」と匙を投げられることとなった。その後、D整形外科、E病院、F病院を経て、現在は(専門医ではない)G病院と(専門医である)H病院を並行して受診している。体のあらゆる場所に激しい痛み(刃物で刺されているような痛み、凍傷のような痛み、鈍痛、血管の中をガラス破片が流れるような痛み、骨折のような痛み等)を感じ、家事や日常生活等にも大きな支障をきたしている。 |
請求の過程 | 今回も線維筋痛症の方からのご依頼でした。前記の通り、当初は専門医であるH病院に診断書の作成依頼を行いましたが、作成を断られてしまいました(理由は全く分かりません)。そこで、(専門医ではない)G病院に作成をお願いすることにしました。作成に当たっては詳しくヒアリングを行い、日常生活動作について、痛みがどのように影響して支障をきたしているかを文書の中で詳細に記し、診断書に添付して主治医に渡しました。その後、(主治医から田平の方に)記載内容や方法についての質問の電話があり、1つ1つに回答させて頂きました。その甲斐もあり、ご本人様の状態をしっかりと反映した診断書が出来上がりました。また、病歴・就労状況等申立書をしっかり書いただけでなく、痛みの分布や日常生活状況について詳細に示した任意の文書も作成し、万全の状態で請求に臨みました。 |
結果 | 2級での障害厚生年金の支給決定(約1年半の遡り支給あり)。 |
寸評 | 線維筋痛症は認定が困難な疾患の一つです。インターネット等で、この病気での障害年金は難しいことが書かれた記事を見たことがある人もいると思います。また、今回同様に医師に、診断書作成を断られたといった人もいるのではないでしょうか。確かに難しい疾患ではありますが、病気の特性を理解して、慎重にことを進めて行けば、決して認定されないものではありません。これからこの疾患で障害年金の請求をお考えの方は、その点をご留意頂きたいと思います。
尚、H病院で診断書作成依頼を断られた際に、直ぐにG病院での作成に切り替えた点について。医師法19条の2には次の定めがあります。 「診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会った医師は、診断書又は検案書又は出生証明書若しくは死産証書の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」 しかし、私は医師法19条の2を根拠に医師に診断書作成を迫ることはしない方がいいと考えています。何故かというと、診断書は書いて貰えれば何でもいい訳ではないからです。当然のことですが、ご本人の状態を正確に書いて頂かないと意味がないのです。なので、診断書作成を断られた場合は、時間を掛けてでも医師を説得した方がいいでしょうし、場合によっては転院も考えた方がいいかも知れません(勿論、積極的に転院を勧めるものではありません)。そういったこともあり、今回は並行して受診していたG病院に作成をお願いすることになりました。 最後になりますが、専門医ではないG病院で書いて貰った診断書は本当に有効なのか?と疑問に思われた方もいるかも知れませんね。実は精神の障害用の診断書(※)を除けば、専門医でなくても(医師であれば)誰が作成されても問題はありません。これまでにも主治医から診断書作成を断られ、昔からのかかりつけ医(専門医ではない)に作成して頂いて認定されたことが何度かあります。良ければ覚えておいて下さい。 ※精神の診断書については、原則として精神保険指定医または精神科を標榜する医師でないと作成することが出来ません(但し、知的障害や発達障害、認知症、高次脳機能障害など診療科が多岐に分かれている疾患の場合は、診断または治療に従事している医師であれば、(精神科医等でなくても)作成は可能です)。 |